本年度は、(1)血流量の増加と、脳神経活動の関係に関する実証データをさらに入手すること(2)言語能力の熟達度と選択的注意の関係を、さらに、多くの多様なバックグランドを持つ学習者によって検証すること等を中心に研究を実施することを計画した。 具体的成果としては、第1言語と第2言語のリスニング時における脳内活性パターンについて、検証を試みた。第2言語としての英語力がほぼ同等とみられる2群の英語学習者を、L1により、印欧語を母語とするグループと、非印欧語を母語とするグループにわけて、同一の聴解課題を課し、その一間の言語野における血流変化を調査した。結果は、全体的な英語力はほぼ等しくとも、非印欧語を母語とするグループでは、印欧語群よりも、血流の増加量が有意に多く、より多くの注意資源を振り向ける必要があるようにみられた。このことは、表面的には同じ程度の負荷にみえる課題を遂行する際にも、非印欧群はより大きな負担を強いられている可能性を示唆しているように思われる。もう一つの成果としては、研究協力者である大学院国際開発研究科博士課程の大学院生である大石晴美氏は、学習者をProficiency Testの点数で分類するのではなく、血流量の増減パターンの違いにより、無活性型、過剰活性型、選択的活性型、自動活性型の4つに分類し、これらパターン別に、課題の内容に関するスキーマ情報へのアクセスの影響による血流量の変化を観察した。その結果、無活性型では、スキーマ情報があると、血流は有意に増加するのに対し、過剰活生型、選択的活生型では有意に減少することが観測された。これにより、スキーマは、自動活性型をのぞいては、それぞれのグループで働き方は異なるが、いずれも、課題遂行について、有利な影響を与えることが確認された。なお、これらの成果は本年度の大学英語教育学会全国大会において発表された。
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