研究期間3年の初年度にあたる今年度は、以下のことに重点を置いて研究を遂行した。 (1)Rule Space Method (RSM)に関する理論の整理と検討 この種のテーマを取り扱った書籍や論文を収集して、過去の研究過程のサーベイを行いこの手法の特徴の把握に努めた。 (2)RSMとニューラルネットワークモデル(NNM)の差異の明確化 従来から研究してきた階層型NNMを用いてRSMで得られた知見が再現できるかを試みた。これ用のプログラムを計算機上に実現し、数値実験を行ったところ、完全に一致しないまでも、類似した構造が導出された。解釈とこの差異については今後の検討課題である。 (3)Science Reasoning Test (SR-Test)を題材にRSMを適用 思考力を評価することを目的とした問題として実施されているSR-Testを題材として用い、Attributeの抽出を試みた。約300名の解答結果からAttributeと成り得るものを抽出し、それらの中から似たものをまとめあげることによって18問(Item)の中から24個のAttributeを探索した。さらにAttributeの精煉を行ない、これらをItem Response Patternと共にRSMに適用しKnowledge Stateの同定を行なった。 これら一連の研究活動において、RSMの提唱者であるProf. K. Tatsuoka (Columbia大学)と意見交換を行ない、特に3月に訪問した際には、RSM用のソフトウェアPMAINの利用方法とAttributeの精煉方法について貴重な助言を受けた。また、その時々の研究の一端を日本行動計量学会(9月、東京)やARS(12月、釜山)で発表し、また実際の数値実験例等をNCME(4月、シカゴ)で報告する予定である。 今後は引き続きAttributeの探索と精錬を続け、RSMの有用性とAttributeの探索法について研究を推進すると共に、これらの知見をまとめて適当な研究会や学会で報告し、また論文としてまとめる予定である。
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