本年度は、児童期に1年以上山村留学し、そこで自然活動を体験した61名とその体験が全くないか短期の体験がある177名の、現在平均年齢20歳の若者を対象に、過去の体験活動歴と内容、体験後の変化とその現在までの持続度、現在の体験活動の状況、自然・農業的体験度、自然観や自然体験活動への理解・関心について質問紙にて調査した。また長期自然活動の実施場所について現地調査した。調査結果は因子分析法と分散分析法により整理した。その結果、児童期の自然体験活動の長期持続的な教育効果を認め、児童期の自然体験活動は体験者の成長後の価値認識まで影響を及ぼすことが統計的に証明された。その成果をまとめると、以下の5つに集約される。 1.自然体験を通して生命を大切にし、生き物や他人を思いやるやさしい心を育てることが可能である。また自然活動の直接体験によって人との触れ合いの大切さを知り、良い人間関係が形成される。こうした心はいずれも成人まで保たれる。 2.自立心、忍耐力、良い生活習慣などは自然体験を通して一時的に身につけることができるが、成人まで保つにはその後の本人の努力が必要となる。 3.家族との関係や食べ物の嗜好は自然体験によって変化が生じにくいが、この変化が生じた場合は成人まで保持される傾向にある。 4.計画性、集中力、学業への意欲や成績の直接的な上昇及びその継続性については、自然活動の体験を通してはあまり期待できない。 5.児童期に自然活動を体験した人は、自然体験活動の精神的効果やその理解が強まる。 次年度はこの結果を基に、学校での総合的な学習、生活科や技術科における長期的展望のある教育効果を期待できる自然体験活動のカリキュラムを開発する予定である。
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