今年度はタイ国内で日本語教育に従事する日本人教師(以下JTと表記)とタイ人教師(以下TTと表記)の外国語や日本語の学習・教育と言語習得一般に関する考え方についての調査、現地での授業見学と情報収集、及び現場教師との意見交換を行った。 調査(有効回答数:JT60人、TT64人、調査有効率:JT43%、TT30%)の結果をカイ二乗検定(有意差5%水準)にかけ、TTとJTのグループ間における回答分布の異同について分析したところ、両グループに一致する傾向の見られた項目が65項目中27項目、グループ間で異なりを見せたものが38項目あった。 両者に共通する考え方で目についたのは「言語外行動」や「外国語学習と文化」に関連する項目で、中には両グループとも90%以上の割合で意見の一致を見せる項目もあった。 一方、回答分布に異なりを見せたのは「教師の役割や責任」に関連した項目で、JTに比してTTのほうが教師主導型で授業を展開する傾向のあることが窺えた。 この他TTとJTの価値観で異なりを見せ、注意を引いたのは「学習しやすい外国語とそうでない外国語がある」という記述に対する回答、及び「日本語は難しい言語か、易しい言語か」という質問に対する回答であった。「日本語学習で一番重要なのはタイ語から日本語への翻訳の方法を勉強することだ」という意見で両者の考え方が大きく異なったことと併せて、TTとJTの日本語教育の現場での連携を考えていく場合に考慮しなければならない部分であろうと思われた。 また、調査票における回答のされ方全体を概観してTTのほうが語学教育や言語の習得についてJTよりはっきりとした主張や意見を持っており、学習者や学習成果に対してもより厳しい姿勢で臨む傾向のある様子が観察された。この点も両者の連携、協力体制の構築を考える際に考慮しなければならない点であろうと思われる。
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