研究概要 |
DNA計算機の実用化に向けての基礎研究として,平成14年度は以下のことを行った. (1)Adlemanが用いた計算モデルは抽出モデルと呼ばれ,基本操作のエラー率が高いといわれている.Amosは基本操作に除去操作を用いた計算モデルを提案した.このモデルはエラー率が非常に低いが,使用DNA量が多くなるという欠点がある.本研究では,Amosの計算モデルをより実用的な観点から見直し,現実的なモデルを提案した(研究発表(4)).その計算モデルの上で,DNA量を削減するための方法論として,(a)新しい解の符号化,(b)分割統治法の適用を提案し,NP完全問題であるハミルトン経路問題,グラフの三彩色問題,部分グラフ同型問題に適用した.いずれの問題に対しても新しい解の符号化については理論的にAmosの解法に比べて悪くはならないことを示した.また,新しい解の符号化と分割統治法を緯合わせることによって,100%近くDNA量を削減できることをシミュレーションにより示した(研究発表(1)〜(4)). (2)DNA計算機を実用化するためには,加算や論理演算などをDNA計算の枠組みで計算しなければならない.従来,加算などの基本演算に関して,計算結果を再び入力とするような方法は知られていなかった.本研究では,計算結果を再び別の入力として用いることができるように,メモリをDNAで表現できるモデルを提案した.そのモデルの上でn個のmビット2進数の任意の論理演算をO(mn)のDNA鎖を用いて,O(1)時間で計算できるアルゴリズムを示した.また,O(n)個のmビット2進数の加算をO(1)時間で行うアルゴリズムを示した(研究発表(5)).
|