本研究の目的は、効果的な少数キーによるテキスト入力の新たな方式を提案し、その有効性を評価することである。この方式は、積極的に「曖昧さ」を導入することによってキーの個数を削減することと、その曖昧さを解消するために利用者ごとに語彙辞書を個別化することを効果的に組み合わせるという発想に基づくものである。本研究期間を通じて、日本語テキスト入力のための10個のキー入力システム(Touch-Me-Key 10)、日本語テキスト入力のための4個のキー入力システム(Touch-Me-Key 4)、非英語、非漢字の言語(タイ語等)に対するテキスト入力システム、数個(4個程度)のキーに相当する注視点センサ等による福祉用入力システムのプロトタイプの作成と評価を行なう。このうちで、平成14年度には、個人用辞書の実現法に関する研究を実施した。利用者の入力によって、辞書を更新する学習アルゴリズムとして用いるPPM法の有効性を確認したほか、日本語テキスト入力においては、携帯電話のような10個のキーを用いるTouch-Me-Key 10の場合に、通常のキーボード打鍵と同程度の打鍵数で可能であるという基礎データを得た。また、従来の方式の入力辞書を用いるものではない構成法として、いわゆる「辞書なし」のSancDic方式を提案し、有効性を確認し、これらの成果を国際会議で発表するとともに、論文誌にも公表した。
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