研究概要 |
本研究は,多自由度の身体を相互作用場とする大域カオス結合系を用い,秩序状態の発生・変化と身体・環境の状態との関連性を実験的に解明することで,行動の創発における身体性の情報論的意味を明らかにすることを目的とする. 上記の目的に向けて、今年度は以下の研究成果をあげた。 1.筋骨格系身体モデルと動作シミュレーション環境の構築・改良:筋肉モデルと骨格モデルを実装し、筋肉駆動関節モデル、および、多脚虫型モデルを構築し、それらが物理法則に従って動作する環境を完成した。また、身体性の変化と環境の変化による効果を実験するために、身体モデルの各種バリエーション、および環境構造の変更機能を実装した。 2.カオス結合系と筋骨格系の結合定数の実験的決定:上記シミュレーション環境を用いて、カオス結合系との接続動作実験を行い、結合定数を系統的に変化させ、振る舞いを評価した。これにより、結合定数の値を具体的に決定した。有意味な振る舞いは、結合定数にさほど敏感でなく、比較的安定に発生することが明らかになった。 3.行動創発・適応実験:上記の系が、身体・環境ダイナミクスの特性に従い、コンシステントな運動を自発的に発見・生成することを実験的に確認した。また、系のパラメータを系統的に変化させ、系のダイナミクスの状態の分布を明らかにした。さらに、身体構造の部分的変更や、障害物の出現・消滅、などの身体性変化に対する適応性も確認した。 以上の成果により、この新たな運動創発パラダイムが原理的には有効であることを確認し、その適応能力を実験的に示した。
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