研究概要 |
不確実なデータや情報に基づく現実の意思決定に対するこれまでのアプローチは,確率計画法とファジィ計画法に代表されてきており,不確実性を全く異なる観点から取り扱ってきているのが現状である.このような状況の下で,本研究では,不確実性の下での現実の意思決定状況のモデリングによる確率変数やファジィランダム変数を含むファジィ多目的計画問題の定式化を進め,これまでの確率計画法を,確率変数やファジィランダム変数を含む状況下へ拡張するとともに,ファジィ計画法の望ましい特徴を取り入れたソフト最適化の概念に基づく対話型ファジィ多目的計画法の開発を試みた.より具体的には,多目的確率線形計画問題に対する期待値最小化モデル,分散最小化モデル,確率最大化モデルおよび満足基準最適化モデルに基づく対話型ファジィ満足化手法を提案するとともに,確率変数係数を含む多目的線形計画問題に対する確率最大化モデルに基づく対話形ファジィ満足化手法をも提案し,比較的小規模の数値例によりその有効性を示した.また,今後,連続変数のみならず離散変数のファジィ多目的離散最適化問題にも対処し得るような対話型ファジィ多目的最適化手法を開発するために,制約式の係数がすべて非負かつ不等号の向きが一定であるようなナップサック型の整数計画問題に対してこれまで申請者が提案してきた2重構造文字列遺伝的アルゴリズムを,制約式の係数に負の数が含まれたり,不等号の向きが一定でないようなより一般の整数計画問題に対しても適用が可能となるような拡張を試みた.さらに,確率変数を考慮した確率計画問題の定式化とファジィ情報を考慮したファジィ計画問題の定式化に基づいて,可能性測度や必然性測度の観点から,これまで個別に考察されてきた確率的不確実性とファジィ論的曖昧性を同時に考慮したファジィランダム変数を含む新たな多目的線形計画問題や多目的整数計画問題の定式化を進め,意思決定者のファジィ目標を考慮した対話型意思決定手法を提案した.さらに提案した対話型意思決定手法に基づいて,C言語によるソフトウェアを作成するとともに,小規模から中規模までの数多くの数値例によりその有効性を示した.
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