研究概要 |
エージェントベース・シミュレーションという手法自体は、さほど新しいものではない、1980年代後半に生じた人工生命やカオスといった研究の延長線上に、人工組織・人工社会研究が行なわれたのは自然の流れとも言える。たとえば、米国ではサンタフェ研究所のSwarm、ミシガン大学のアクセルロッド、コーエン等によるCAR(Cohen, Axelrod, Riolo)、カーネギーメロン大学のCASOS(Computational Analysis of Social and Organizational Systems)プロジェクトなどがある。一方、欧州では英国のサーレイ大学を中心としたSIMSOC(Simulating Society)が活発に活動している。一方、日本においては、独自に、塩沢由典(大阪市立大学)が先物取引市場の実験システムの開発を企画立案し、出口弘(東京工業大学)が仮想経済ゲーミングを設計するなど、いくつかの萌芽的な実験プロジェクトが始まっている。このような状況下で、研究代表者(新井潔)は、長年にわたりヒューマンエージェント・シミュレーションであるゲーミングシミュレーション研究を実施しつつ、エージェントベース・シミュレーションとの融合を模索するなかで本研究の着想を得た。 本研究の目的は、人工知能、情報科学などの工学分野と経済学、経営学、認知科学、社会心理学などいわゆる文科系分野の融合研究を促進するためのプラットフォームとしての共通の問題領域と問題解決のための方法論的基盤を整備することである。現時点において、人工知能研究者と活発な討議を重ね、ゲーミングシミュレーションのいくつかの事例をエージェントベース・シミュレーションに置き換える共同研究を展開している。また、この成果は、本年度中に国際会議において発表する予定である。
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