研究課題
本年度は、表層雪崩に関してはニセコアンヌプリ山系、全層雪崩は問寒別の北海道大学の天塩研究林内にある雪崩観測施設近傍をそれぞれモデル地域に限定し、雪崩の発生予測手法の確立に向けた研究を実施した。ニセコアンヌプリの標高800m地点に、自動気象観測システム(気温、湿度、風向・風速、気圧、積雪表面温度、雪温、積雪深、長波・短波放射を10分間隔で測定し、携帯電話にてデータ転送)を設置し、12月初旬より熱収支解析が可能な気象データを収集した。また現地では断面観測をほぼ毎日実施し、積雪構造に関するデータ(層構造、雪質、密度、雪温など)を取得するとともに、山域内での雪崩発生情報を収集した。またこれと併行して、1次元の積雪変質モデルであるスノーパックを用いて実測と計算結果の比較検討を行い、(1)実験的に求められた積雪中の温度勾配としもざらめ雪の成長速度の関係、(2)降水(雨)の寄与を組みこむなど、モデルに含まれるアルゴリズムの改良を行った。またニセコには地震計、問寒別には地震計と超長波マイクロフォンを設置して、対象域での雪崩発生のモニタリング手法としての可否、さらには発生日時、発生個所、規模、運動等にかかわるデータの収集と解析手法の開発を行なった。上記の研究成果は、2003年6月にスイスのダボスで開催される国際雪氷学会において発表され、学術雑誌(Annals of Glaciology)に印刷物として刊行される予定である。