研究課題
前年度に引き続き、ニセコアンヌプリの標高800m地点に、自動気象観測システム(気温、湿度、風向・風速、気圧、積雪表面温度、雪温、積雪深、長波・短波放射を10分間隔で測定し、携帯電話にてデータ転送)を設置し、熱収支解析が可能な気象データを収集した。また現地では断面観測を適宜実施し、積雪構造に関するデータ(層構造、雪質、密度、雪温など)を取得するとともに、山域内での雪崩発生情報を収集した。また地震計と超長波マイクロフォンを設置して、対象域での雪崩発生日時、発生個所、規模、運動等にかかわるデータの収集と解析手法の開発を行なった。雪崩発生の事例解析からは、低気圧の接近、通過から冬型の気圧配置に至る気象推移の中で、雪崩発生の要因となる弱層・境界面とスラブが形成される過程が確認された。1次元の積雪変質モデルであるスノーパックを用いて実測と計算結果の比較検討を行った結果、雪崩発生時の積雪状態は比較的良い精度で再現することができた。また雪質と密度からせん断強度を算出し対象斜面の安定度を計算した結果も、雪崩予知に向けて有効な指標となることが示された。上記の推定手法を対象領域全体に適用するにあたっては、1点での気象観測データを山域にわたって拡張する必要がある。気温は高度減率から、また長波・短波放射は地理情報システム(GIS)の利用によりある程度の精度で推定が可能である。一方、地形に基づく風速の変化(分布)は、吹きだまり分布の形成、つまり積雪深の変化に大きく寄与する。本研究では、GIS(50mメッシュの地形データ)と、グリッドの傾斜と曲率にもとづいて風速変化を記述する単純な近似式を用いて計算を行った。この結果は1万分の1の地形模型を用いた風洞実験結果とも良く一致した。
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