研究概要 |
研究の初年度である平成14年度の調査から,以下のようなことが判った. (1)大谷石は第三紀中新世に生成された代表的な熔結凝灰岩であり,膠結組織・気泡組織の発達した無層理塊状の岩体をなす流紋岩質で,石材として採掘・利用されているものである.地質学的・岩石学的には,岩相や火山岩類との層序関係から,最下部層,下部層,中部層,上部層とに4分される.最下部層から順次上部層にいたるまで,北東-南西の方向性をもち,南東に傾斜する同斜構造を呈している.下部層から採石されたものは,採石場の字名をとり「田下石」「桜田石」と呼ばれている.中部層は大谷石を代表するものであり,「荒目石」とも呼ばれる.この「荒目石」は,軟質荒目と硬質荒目との区分される.上部層には熔結度の弱い「細目石」が多い. (2)一般に細目石の分布する地域では岩盤崩落が顕著である.次いで軟質荒目で少し発生し,硬質荒目地域では岩盤崩落はほとんど発生していない. (3)岩盤崩落の場所としては,断列系に沿ったところあるいは二次的な割れ目が交わるところに発生しやすい. (4)下位のものほど熔結度が大きくなっている.すなわち岩石の強度としては下位の硬質荒目が最も大きく,上部の細目がもっとも小さい. (5)上記の(4)と(5)から,岩盤崩落の地域的偏在は,分布する岩石の強度にコントロールされている可能性が示唆される.
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