研究概要 |
超短パルスレーザーとプラズマの非線形相互作用は集光スポット近傍での位相分布と偏光分布に依存する。本年度は,ビーム断面内での偏光分布制御技術を確立し,それを用いて縦電場の発生及び3倍高調波の発生実験を行った。 偏光制御素子の開発:液晶の旋光性を利用した偏光制御素子を開発した。これは,液晶セルの,入射側基板の配向膜には平行直線ラビングを,出射側には同心円状ラビングを施したものであり,直線偏光を軸対称偏光(radial偏光とazimuthal偏光)に90%以上のエネルギー効率で変換できる。なお,ビーム全体にわたって同位相となるように,素子の半分には半波長の位相シフターを付加した。 縦電場の観測:radial偏光ビームを明るい光学系で集光すると,焦点近傍に縦電場(光軸方向の電界ベクトル成分)が発生する。ピークパワー45kWのYAGレーザーを集光した時の縦電場を光カー効果を利用して測定したところ,約10^8V/mであった。この素子を1TWレーザーに適用すると,約0.1TV/mの超高強度の縦電場発生が可能となる。 3倍高調波発生実験:0.5TWチタンサファイアレーザー(波長800nm)パルスをガスパフターゲットに集光し,レーザー偏光が直線偏光,radial偏光及びazimuthal偏光の場合について,3倍高調波(波長267nm)の強度を比較した。radial偏光では直線偏光に比べて2倍以上の増加が観測され,これはリング状集光パターン(横電場)をもつradial偏光が同じくリング状の高次モードであると予想される3倍高調波を発生しやすいためと解釈できる。
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