今年度は前年度行なったGd金属箔の検出効率が思うように上がらなかったことから、Gd系シンチレータの薄膜化とMCPの組み合わせについて実験的に研究を進めた。Gd金属箔からの内部転換電子は1方向へのみ放出された分がMCPに入射可能となる。一方、Gd系シンチレータを使用した場合は、内部転換電子がシンチレータ内で光に変換されるため、光の取り出しを上手く行なうことで4π方向に出た内部転換電子を全て捉えることができる。この方法をもちいた場合、最大の問題となるのがMCPが直接γ線や中性子線と反応することである。この部分については北大ライナックならびに高エネルギー加速器研究機構KENSにおける実験を行い、MCPが直接反応した場合の信号の減衰時間(数ns)とシンチレータの減衰時間(数10ns)程度の違いをもちいて弁別できることを確認した。またシンチレータの薄膜化については、今後さらに進める必要があるものの、焼結手法によって中性子をほぼ100%捕獲し、γ線の影響を最低限に抑えられる30μmの厚さを得るめどを立てた。このシンチレータは焼結条件によって発光強度と透明度が変わることが分かっている。この部分については今後、合成条件の最適化をすすめる必要がある。本研究は今年度で終了するが、Gd系シンチレータとMCPを組み合わせることで、中性子イメージングを行なえる基礎的実証データを積み上げることに成功し、初期の目的を達成することが出来た。今後、さらに100μm以下の位置分解能をもち、残留応力測定等に使える中性子イメージング装置の開発につなげていく必要がある。
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