研究概要 |
今年度は培養系の確立、窒素固定者と植物プランクトンの共生関係、およびシアノバクテリアによる窒素固定速度測定法の確立を行った。まず野外調査として東大海洋研究所白鳳丸KH-02-1次航海(5~6月東シナ海)、同KH-02-4次航海(11~12月スールー海およびセレベス海)、長崎大学水産学部練習船長崎丸7月航海(7月東シナ海)で野外株の分離を試みた。培地には溶存窒素濃度が低い天然海水ベースのTMV培地および人工海水ベースのYBCII培地を用いた。その結果、2度の白鳳丸から得られた株は3ヶ月間程度の培養に成功した。より長期の培養のためには混在生物の除去、特に従属栄養者の除去が重要であることが明らかになった。 次に水産庁調査船「蒼洋丸」航海による黒潮海域の植物プランクトン試料から窒素固定能をもつシアノバクテリアとホスト藻類について解析した。その結果、珪藻Rhizosolenia clevei var.clevei, R.clevei var.communis, Guinardia cylindrus, Hemiaulus hauckii, H.membranaceous, H.indicus, Chaetoceros sp.cf C.compressusにシアノバクテリアの共生を認め、その分布様態を明らかにした。 窒素固定能測定法としてアセチレン還元法を用い、測定条件の設定と検討を行い密閉容器材質、カラム、採取の方法を確定した。これにより、シアノバクテリアTrichodesmium、同Synechocystis、同Synechococcus培養株を用いて培養条件下での窒素固定能を解析した。その結果、前2者に固定能を見いだし、固定速度と明暗周期、培地中の無機態窒素濃度との関係について解析を進めている。
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