ダイオキシン受容体は、リガンドであるダイオキシン類が結合して初めて標的遺伝子の調節DNA配列に結合する。本研究ではこの性質を利用することにした。リガンドであるダイオキシン様物質の存在に応答して受容体が結合した標的DNA配列を、タグ付き受容体の精製を通して単離し、PCRにて増幅させる(転写因子標的DNA濃縮法)。これによって、試料中にごく微量でも存在するダイオキシン類を間接的に検出するという手法である。 前年度に、Hisタグ付きのダイオキシン受容体AhR、および、共役受容体ArntをコードするDNA断片を酵母内強制発現ベクターヘサブクローニングしていた。 今年度は、まず、標的DNA配列(DRE)を持つプラスミドの作製を行った。AhRおよびArntのヘテロダイマーが結合するDREを持たせたプラスミドを作製した。今後、これと、標的配列を持たないもう一つのプラスミドを、AhR-His、および、Arntを発現する組換え酵母に保持させる予定である。 また、酵母のアミノ酸合成遺伝子をノックアウトしながら目的遺伝子をノックインすることができる汎用ベクターを構築した。このベクターに、酵母内で強制発現できるようデザインしたAhR-HisおよびArnt遺伝子を挿入した。 一方、構築した発現遺伝子の産物が望む機能(二量体化と標的DNAへの結合)を発揮することを確認するために、大腸菌内で大量発現させ、転写因子標的DNA濃縮実験を行った。しかし、標的DNAであるDREを有意に濃縮することはできなかった。現在、ダイオキシンを用いて、二量体化を促進して同様の実験を行っているところである。
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