研究課題
哺乳動物細胞への紫外線影響はDNA中のピリミジンダイマー生成などが知られているが、UVB領域においてはそれらの生成と突然変異頻度との関係は明確ではない。我々はUVB照射によって動物細胞内に長寿命ラジカル(LLR)が生成されることを発見した。放射線で同様に生成するLLRは、点突然変異を誘発する。本年度はUVB照射によるヒト細胞の細胞死・突然変異誘発の影響と照射後のビタミンCによる突然変異抑制について検討した。電離放射線誘発LLRsと同様に、UVB誘発LLRsも細胞死に関与しないことが明らかになった。一方、突然変異生成に関しては、UVB照射後にビタミンCを添加すると、添加しない場合と比較して20%ほど発生頻度が下がるが、電離放射線の場合に97%も抑制されたことと比較すると、UVB誘発LLRの突然変異誘発への関与は小さい結果となった。昨年度の研究で、UVB、UVC照射によって細胞中に生成するLLRの1種類は、放射線照射時に生成して突然変異を誘発するLLRと同一のスルフィニルラジカルであり、UVB照射によって生成したLLRとビタミンCとの反応速度定数は、γ線照射によって生成したLLRとの速度定数の約10倍になることがわかっている。これらのことと併せて考えると、UVB照射によってLLRの生成したタンパク部位は、UVBとγ線では異なることが示唆される。UVBとX or γ線では透過率が大きく異なるため、UVBではLLRが細胞膜表面の膜蛋白質に多く生成するのに対し、γ線では細胞の部位を問わず細胞中の蛋白質中に生成すると考えられる。
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