研究概要 |
1.エチレン非感受性を付与したタバコ遺伝子組換え体のN・P吸収の調査と解析 栽培タバコ(Nicotiana tabacum cv.Ky57)に変異エチレンレセプター遺伝子(mNT-ERS1)を導入した組換え体の中から,強いエチレン非感受性を示す5株を選定し,連続通気水耕栽培でのリン酸吸収能を検討した。6〜7葉期の幼植物の場合,4日間で1.0mM PO_4^-を含む培養液から,野生株(Ky57)は1.20±0.20mg gFW^<-1>,変異体No.11-21,No.44-12,No.44-14,No.32-19,No.32-25株では,それぞれ1.40±0.25,2.36±0.39,1.97±0.36,1.37±0.39,1.31±0.38mg gFW^<-1>のPO_4^-を吸収した。その結果,エチレン非感受性変異体より,リン酸吸収能が高い表現型を獲得した,No.44-12,-14株を分離することに成功した。 2.タバコ植物に水耕栽培適性を付与する遺伝子の検索 非常に強い嫌気耐性を示す水生単子葉植物ヒルムシロ(Potamogeton distinctus)殖芽及びウリカワ(Sagittaria pygmaea)塊茎から,無酸素条件で発現する遺伝子群を単離する試みを行った。 (1)ヒルムシロ殖芽で,2つのsucrose synthase(SySy)遺伝子を単離し,その一つの遺伝子の発現上昇が嫌気条件でのエネルギー代謝に深く関わることを明らかにした(第16回日本植物学会東北支部福島大会)。 (2)ウリカワ塊茎から,細胞壁成長に関連した4つのexpansin遺伝子と5つのキシログルカン転移酵素遺伝子を単離し,各々一つの遺伝子の発現が嫌気条件で高まることを明らかにした(第67回日本植物学会札幌大会)。 (3)3時間の無酸素処理で特異的に発現する遺伝子群を,ヒルムシロ殖芽からsubtraction法で単離する試みを行い,現在まで19種の遺伝子の部分塩基配列を決定した。解糖系に関わる酵素の遺伝子に加え,液胞膜に存在するinorganic pyrophosphatase遺伝子を同定した(第45回日本植物生理学会年会発表予定)。
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