前年度までに浮上性アオコ処理に有用微生物の単離、固定化を検討した結果から、生分解性プラスチック担体に固定化した微生物(Bacillus cereus N-14)による実環境処理(群馬県館林市城沼)を試みた。処理開始後2日目までに対照と比較して80%以上の有意な処理能力を確認することができたが、残念ながら開始4-5日後までには再び同程度にまでクロロフィル濃度の回復が見られた。気象条件その他の影響及び、予想を上回る速度で担体の崩壊が進行し、4日後までに浮上性を維持している担体がほとんど見られなくなったことが主な原因と考えられた。また短期間の微生物-アオコ接触では死滅にいたらず、その後数日で回復することも確かめられた。これらの結果から本研究で提唱する浮上性担体を用いた新しい処理プロセスの意義をあきらかにすることが出来たと考えられたが、同時に浮上性の人為的コントロールを検討することが必須と考えられた。 活性の維持及び期間のコントロールを可能にするために、(1)カプセル化による微生物由来有用物質のリリーズコントロール 及び(2)担体の浮上性のコントロール の2点の検証を試みた。その結果(1)はカプセル化後の活性が不明瞭になり有意な検証を進めることはできなかった。(2)については、本研究において確立した比重調整型浮上性ヘドロ焼成担体の表面にアラビックガムでの包括固定化した担体を用いた実験を行った。その結果ヘドロセラミクス担体は3ヶ月以上の長期にわたり浮上を続け、また生分解性のアラビックガムを用いた固定化法によって固定化された菌体の活性促進が明らかに確認することができた。 生分解性プラスチック担体を用いた場合と異なり、長期もしくは人為的に調整可能な浮上性を獲得することに成功したが、アラビックガムは非常に親水性が強く溶解性をコントロールすることが困難であった。その結果大きな活性を示すことができたのは担体投入後数日のみであり、その後は平均的な活性を維持するに留まった。 そこで、アラビアガムの安定性を高めるためにPEIでの架橋を試み、その溶出を低減することに成功した。さらに、微生物との親和性が高く、かつ浮上性を有する安価な担体として廃棄プラスチックの炭化物を用いることを着想し、この利用方法の開発にも着手した。
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