本研究は希土類元素をドープしたフッ化物ガラスからのアップコンバージョン発光を利用した光触媒反応への太陽光の有効利用と反応効率向上を目的とする。本年度はガラスの合成と発光の特性評価、光触媒反応装置の試作と最適なモデル反応の検討を行った。 1.ガラス微粒子の合成 カンタル型電気炉と白金るつぼを用いてTm^<3+>ドープのFluoroindateガラスを合成した。合成物は全体的にほぼ透明であったが、部分的に着色しており結晶化していた。 2.アップコンバージョン発光観測用システムの試作と発光観測 半導体レーザー等を用いて発光の観測システムを試作した。合成ガラスは文献と同様な発光スペクトルを示したことから、アップコンバージョン発光するガラスが合成できたこと、および試作した観測システムが正常に動作することを確認した。 3.光触媒反応の観測とガラス微粒子の効果の実験 モデル反応としてパラニトロ安息香酸(PNBA)とトリクロロエチレン(TCE)の分解反応を検討した。PNBAの分解反応はガラス製反応容器を試作し液相系で試みた。紫外線ランプ60分照射で約60%、240分で約86%の分解が観測された。この結果は文献と一致し、試作した光触媒反応システムが正常に動作することがわかった。TCEの分解反応は反応容器中のガラス板に固定した光触媒に気相TCEを作用させて試みたが、分解を確認することはできなかった。これよりPNBAの光触媒分解反応はモデル反応として、アップコンバージョン発光による光触媒研究に有用であることがわかった。 4.金属微粒子による光増強の効果の実験 合成ガラス表面に金を微粒子状に蒸着して、アップコンバージョン発光を観測した。金微粒子の効果と思われる発光の増大が観測され、今後確認実験を行っていく予定である。
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