H15年度は試作した反応セル等から成る反応・観測システムにより光触媒を溶液分散形態で用いてパラニトロ安息香酸(PNBA)をモデル物質として赤色アップコンバージョン(AC)光による光触媒反応を確認・効率向上を目指してきた。H16年度は「交付申請書」に若干の変更を加え遂行した。光触媒を塗布形態で用いてPNBA以外の物質でもAC光による光触媒反応の検証等を行った(下記"1")。さらに反応効率向上に寄与すると期待される下記の種々の試み-金属微粒子効果(下記"2")、ガラスの再設計(下記"3")、および白金担持光触媒(下記"4")-をH15年度の準備をもとに展開した。 1.塗布形態でのAC光による光触媒反応:光触媒の代表的な使用形態である塗布形態でも、AC光による光触媒反応が可能か検証した。反応・観測システムを新しく試作し、エオシンをモデル物質としてAC光による光触媒反応を調べた。その結果、約7%の光触媒反応が実証された。 2.反応効率向上のための金属微粒子の光増強効果:H15年度はTmと同じ希土類元素であるEuの固相状態からの蛍光が金属微粒子により増強されることが示された。H16年度はこの結果の再現性を調べた結果、あるバンドのみが増強されること、など更に新しい成果が得られ、金属微粒子によるAC光増強の貴重な基礎データとなった。 3.反応効率向上のための高発光効率の希土類添加ガラスの設計と合成:金属微粒子のプラズマ吸収のエネルギー移動によるAC効率向上という新しい試みのため、ACガラスに種種の金属を添加した。今回特に改善は見られなかったもののガラスは合成され、今後の展開が期待される結果となった。 4.反応効率向上のための白金担持光触媒塗布ガラスの合成とその応用:光触媒にACガラスをコーティングして反応効率向上を目指すための基礎的知見を得るため、白金担持光触媒塗布ガラスを合成し、白金担持光触媒による反応効率向上と担持白金によるAC光増強との二重の向上効果を試みた。Xeランプによる予備実験では数倍の効率向上が示され、AC光による効率向上が示唆された。
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