研究概要 |
本年度、他予算により赤外領域円二色性分光器を購入し、設置作業を行った。世界的にも13台目の装置であるため、装置のセットアップ及び分析条件の検討にかなりの時間を費やした。スタンダード化合物であるαピネンにより詳細な条件検討を行った。特に、セルの調節及び溶媒等の検討を行った。また、理論計算を行うための他予算で購入した計算機のインフラの整備を行った。Compaq alphaserver ES45およびPentiumIV 2GHzを4台結合させたPCクラスタを主力マシンとして、利用し、Gaussian 98によるスタンダード化合物の理論スペクトルの再現を試みた。結果的に、密度汎関数法(B3LYP)および6-3G(d,p)基底関数を用いて理論計算を行うことにより、実験スペクトルと理論スペクトルの良好な一致を得ることに成功した。 次に単糖類の測定を行った。グルコースに関しては鏡像体の測定を行い、鏡像体どうしが完全に反対のスペクトルを示すことを確認した。理論上は当たり前であるが、開発途中の装置では、このような基礎実験が今後のデータの信頼性を得るために極めて重要であると確信している。また、D-ガラクトース、D-マンノース、D-キシロース、D-フコース、D-リボース、D-N-アセチルグルコース、D-N-アセチルガラクトース等中心とする単糖類のVCD測定を行い、これらが、まったく違うVCDスペクトルパターンを示すことを発見した。一般に、少数の立体化学の違いをこれほど明確に識別できる分析法は皆無であり、VCDが糖類に極めて有効な分析手段であることが期待された。 次に保護基の検討を行った。各種単糖類をベンジル化、アセチル化し、VCDの測定を行った。その結果、アセチル化された糖類のVCDシグナルが数倍にも増大し、アセチル化がシグナル感度を上昇させるのに非常に優れた保護基であることを確認した。
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