研究概要 |
先に我々はカルパイン内在性阻害タンパク質カルパスタチンがアポトーシス時にカスパーゼによって切断されることを報告した.カルパスタチン断片の末端配列分析結果に基づいて切断部位特異抗体を作成し,アポトーシス細胞におけるカルパスタチンの動態解析を試みたが,カルパスタチンはさらなる分解を受けるようで抗原ポリペプチドは検出されなかった.しかし,本抗体で認識される95kDaの新たな分子が見つかった.95kDaポリペプチドは,アポトーシス特異的で阻害剤による実験結果などからもカスパーゼの切断によって生成することが強く示唆された.部分アミノ酸配列分析の結果,非骨格筋型ミオシン重鎖(A型)(MH-A)のC末端フラグメントであることが判明した.MH-AにはDAIDという配列が存在しないので,--DAID-COOH(カルパスタチン)に対して作成した抗体がMH-Aの異なった配列に結合したことになる.詳細な解析からMH-Aは,中央部分とC末端近傍の二カ所でカスパーゼによる切断を受けることがわかった.中央の切断部位はDTLD1153/STであった.C末端近傍の切断部位は,プロテインシーケンサーあるいは質量分析計を用いても,決定が難しい.抗--DAID-COOH抗体が95kDaポリペプチドのC末端に結合してイムノブロットで染色されることから,合成ペプチドによる競合実験を行った.すなわち,MH-Aにおいてカスパーゼによって切断されうる部分をC末端とするペプチドを合成し,抗--DAID-COOH抗体によるイムノブロット像に対する影響を調べた.AGDGSDEEVD-COOHが抗体と競合して免疫染色を抑える効果を示した.以上の結果から,C末端に対する切断部位特異抗体は,新規プロテアーゼ基質の探索のみならず,合成ペプチドを活用することによってC末端配列の解析にも利用できることが明らかになった.
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