研究概要 |
最近私たちは,新規の膜7回貫通型受容体を見つけ,その構造上の特徴,すなわち細胞外領域が極めて長く,そこにImmunoglobulin(Ig)様リピートを有することからIg-Heptaと名付けた。Ig-Heptaは長いN末端細胞外領域にタンパク質間の相互作用に関わるドメインを持ち,膜7回貫通型受容体ファミリーの中では,LNB-TM7(long N-terminal typ B 7 transmembrane)サブファミリーに属する。構造決定や組織分布を決めたこれまでの仕事を発展させ,以下の成果を得た。培養細胞293Tを用いたパルスチェイス法により,Ig-Heptaは細胞内で2度のプロセシングを受けて切断されることが分かった。これらのプロセシングによる切断部位を明らかにするために,切断されたIg-Heptaの断片を用いて,ペプチドシークエンスの決定を行った。その結果,片方の切断部位はLNB-TM7に共通して存在するGPS(GPCR proteolytic site,細胞膜に比較的近いところにある保存領域)であることが明らかになった。切断後,Ig-Heptaは細胞外領域と膜貫通領域とに分かれるが,それらは非共有的に結合した状態で存在することも分かった。また,もう一方の切断部位はIg-HeptaのN末端付近に存在するSEAモジュールであることをペプチドシクエンシングにより決定した。この切断により,N末端側の約200残基はIg-Heptaから分離する。この部位は,furinによる認識配列(R-P-K-R)を持つ事からN末端フラグメントはペプチドホルモンとしての生理活性を有する可能性が高い。このことはIg-Heptaの遺伝子が受容体とリガンドを同時にコードする特殊な例である可能性を示唆しており興味深い。
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