生細胞内で活性酸素種を検知するために、出芽酵母の酸化ストレスセンサー蛋白質Yap1の構造変化を可視化するシステムを構築した。具体的には、Yap1に2種類の緑色蛍光蛋白質(GFP)の誘導体蛋白質を融合して蛍光エネルギー転移(FRET)の強度変化を観察することにより検出する。 1)Yaplの制御ドメインのN末端側、C末端側にCFPおよびYFPを融合させ発現させた(Yap1融合蛋白質)。その結果、酸化的な酵母変異株内でFRETをおこし還元剤で処理するとFRETが減少し、Yap1の構造変化がこのシステムで可視化できることを示唆した。 2)FRETの効率化:Yap1融合蛋白質が細胞質の還元状態で酸化ストレスによりFRETが起こるようにランダムな変異を導入することにより改変した。その結果、Yap1融合蛋白質の感度が上昇した。 3)Yap1融合蛋白質をHEK293細胞に導入した。ER内に局在化させるシグナルを付加して観察した結果、Yap1融合蛋白質の蛍光が観察された。 本研究により、このYap1検知システムが細胞内の活性酸素種の発生、または外部からの浸入を時間的、空間的に可視化する強力なツールになり得ることが強く示唆された。今後、動物細胞における活性酸素シグナルの検出系として、このYap1融合蛋白質を培養細胞に導入して、酸化ストレス、サイトカイン刺激による活性酸素発生をFRETとシグナルとして検出、時間的変化を検出する予定である。 細胞内における活性酸素種などのフリーラジカルの検出は蛍光物質を用いて行われるが、汎用される試薬はフリーラジカルとの反応生成物を検出するため反応が不可逆的である。また、蛍光物質では細胞内の発生場所などを特定できないが、本研究で開発された方法はこの点も解決するものと期待される。
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