蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用してRNAの構造変化が観察できるか確かめるために結晶構造が明らかとなっている酵母フェニルアラニンtRNA分子のDループの17番目に4-チオウリジンを、Tループの57番目にアミノヘキシルアデノシンを導入することにした。 まず4分割されたtRNAに相当するRNA断片(1/4、2/4、3/4、4/4RNA)を化学合成を依頼して調達した。ポリヌクレオチドキナーゼ、RNAリガーゼを利用した分子整形術により、1/4断片に4-チオウリジン2リン酸を結合させた後、2/4断片を結合して5'半分子を作製した。また3/4断片にはアミノヘキシルアデノシン2リン酸を結合させた後、4/4断片を結合して3'半分子を作製した。ここで5'半分子にはチオール特異的蛍光試薬を、3'半分子にはアミノ基特異的蛍光試薬を反応させた後、ポリヌクレオチドキナーゼ、RNAリガーゼを用いて2種類の異なる蛍光を持つtRNA分子の作製に成功した。 作製されたtRNAはMg^<2+>を含む未変性の条件下と尿素中の変性条件下で蛍光スペクトルが変化した。また変性条件下では蛍光強度の増加が認められた。これらの結果からFRETや蛍光強度から構造変化を手軽に観察できるtRNAを作製できたと言える。しかしアミノ酸の受容が認められなかったことから、tRNAの動的な構造機能相関を観察するためには、蛍光導入部位を考え直す必要がある。
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