エチルメタンスルフォン酸(EMS)で突然変異を誘発した集団(10万ゲノム相当)から、餌である大腸菌のローンから高頻度で離れてしまう突然変異体を5株分離した。解析の結果、3つはそれぞれche-2(感覚繊毛形成に必要なWD40リピートを持つ新奇なタンパク質)、eat-4(Na+依存無機リン酸コトランスポター)、egl-19(電位依存性Ca+チャンネル)のアリールであり、後の2つは新規な遺伝子の変異と考えられた。後者の1つはYACクローンの遺伝子導入によるレスキューに成功し原因遺伝子の同定間近である。もう1つも約0.2map untの狭い範囲にまで遺伝的にマッピングしている。 また、dyf-3変異体が大腸菌のローンから高頻度で離れてしまう表現型を持つことを見いだした。クローニングにも成功しdyf-3は線虫からヒト(脳で発現している)まで高度に保存されている新奇な(機能未知の)蛋白質をコードすることを明らかにした。現在までの線虫を用いた分子遺伝学的な解析の結果から、DYF-3蛋白質は感覚繊毛の細胞膜の成分かもしくはそれを調節する重要なものであると考えている。現在までのところどの生物においてもDYF-3の機能は解析されておらず、私達の線虫での解析が初めてのものである。解析がさらに進めばヒトの神経疾病との関わりが必ずや出てくると考えている。新たにNa+に対する化学走性変異体を分離解析し、その中から常に飢餓を感じているために走性行動が異常になっていると考えられるものを1つ見いだした。
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