(1)出芽酵母の中心体構成因子の一つCdc31に高い相同性を示す分裂酵母における相同因子Chp31(cdc31 homolog of S.pombe)の温度感受性変異株の作成を目的として、プラスミドシャッフリングを利用した変異株の単離・同定を試みているが温度感受性株を得るには至らなかった。chp31遺伝子の発現誘導をコントロールすることで、変異を導入したchp31遺伝子発現ライブラリーのスクリーニングを効率よく行うことを継続中である。その過程で、Chp31の過剰発現が増殖抑制をもたらす可能性を見出したが、その機構については現在調査中である。 (2)Rhp23は、分裂酵母のヌクレオチド除去修復(NER)因子である。Δrhp23株は、紫外線感受性を示すだけでなく、G2期の遅延や一部の細胞で染色体の不均等分配などが認められ、出芽酵母ホモログの解析からも中心体複製の過程に重要な役割を担うことが予想されている。一方でRhp23は、その分子内にユビキチン様構造(UbL)やユビキチン関連因子(UBA)との相同領域を持ち、ユビキチン蛋白質分解系への関与が知られている。我々のグループによるヒトホモログ(HR23B)の解析から、HR23Bにおける試験管内NER反応に必要な領域(NER活性ドメイン)は、これらとは異なる領域であることが明らかにされている。そこで、紫外線感受性を指標として、様々なRhp23変異体蛋白質を用いたNER活性ドメインの同定を行った。その結果、Rhp23のヒトホモログNER活性ドメイン相同部位を含む領域が、分裂酵母細胞内のNER活性に必要であることが示された。Rhp23は、Rhp41あるいはRhp42と複合体を形成してNERに参加すると考えられていることから、Rhp23における結合ドメインの探索を、大腸菌発現系を用いた組換え蛋白質を材料として行った。その結果、Rhp41とRhp42への結合は、Rhp23の細胞内におけるNER活性領域と重なることを明らかにした。また、rhp23-rhp41二重破壊株あるいは、rhp23-rhp42二重破壊株の紫外線感受性回復実験から、Rhp41と結合しNER活性を示すにはNER活性ドメインを含む領域だけで十分だが、Rhp42と結合し、かつNER反応で十分機能するには、少なくともRhp23のUBA領域が関わる可能性を示した。このことは、Rhp41とRhp42の機能に対するRhp23の果たす役割りが異なる可能性や、NER反応とユビキチン系蛋白質分解のクロストークの存在を示唆するもので、今後更なる解析を必要とする。加えて、UbLやUBA領域を持たない変異体ではΔrhp23株の示す細胞周期や染色体分配の異常が相補されないことから、これらの形質と蛋白質分解系の関連を解明することも重要である。
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