これまでに遺伝子および蛋白質工学の進展によって、遺伝子、蛋白質レベルで生命現象の解明が進んできている。これに伴い未知の生命現象の鍵を握るものとして、糖鎖が大きくクローズアップされてきている。我々はこれまで糖鎖研究においては2次元HPLCを用いた構造解析や遺伝子のクローニングによって発現臓器、基質特異性などの解析を主に行ってきた。しかし、糖鎖は種々の遺伝子が順次作用することで作られるので、構造と遺伝子発現を組み合わせて解析することが必須であると考え、報告されている糖転移酵素遺伝子を実際にクローニングし、網羅的解析法を立ち上げた。 これまでに報告されている既知の糖転移酵素(約130種)に特異的なプライマーを設計しRT-PCR法、TAクローニング法によってマウス糖転移酵素群をクローニング行った。現在、このcDNAをテンプレートとしてマイクロもしくはマクロアレイでの解析法を検討している。今後、種々の臓器また胎生12日からアダルトマウスに到る発生の各段階における全脳からmRNAを抽出し、糖転移酵素遺伝子の発現量を比較検討している。肝臓と脳の遺伝子発現比較においては報告されている糖転移酵素ではノーザンのデータと一致した結果が得られている。 この網羅的な糖転移酵素遺伝子の解析によって、糖鎖構造が劇的に変化するときの一連の遺伝子の動きを把握することが可能であり、今後の2次元HPLCによる糖鎖構造解析とともに糖鎖研究の柱となる物と考え実験を進めている。
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