アリールスルファターゼ(Ars)遺伝子ファミリーの発現異常は、さまざまな疾患をもたらす。したがって、Arsは生命活動に重要な役割を果たしていると予想される。しかし、生体内の基質は不明であり、その分子機構は全く解明されていなかった。我々は、これまでの研究で、ウニ胚では酵素としてではなく、形態形成運動の足場として機能していることを見いだしており、当該研究では細胞外基質としてのArsという観点で、哺乳動物における以下の機能解析を行った。 (1)酵素活性ではなく、Arsタンパク質の実体を検出する目的で、マウスおよびラットのArs-A、Ars-Bに対する特異抗体を作製した。(2)これらの抗体を用い、肝臓におけるArs-A、Ars-Bの存在様式を調べたところ、肝実質細胞および血管内皮細胞ともに、両ArsともArsタンパク質の大部分は細胞表層に存在することが明らかになった。一方、人工基質に対する酵素活性は細胞内に局在していた。(3)抗ヘパラン硫酸抗体で、二重染色を行ったところ、ヘパラン硫酸の分布と一致することが明らかになり、細胞表層においてヘパラン硫酸とともに細胞外基質として機能することが強く示唆された。 我々は、ウニ胚ではArsがOtxにより直接調節を受けていることを示している。また、4.5〜6.5日マウス胚では内胚葉が前方へ移動するが、Otx2ノックアウトマウスではその移動が妨げられることが報告されている。そこで、(4)マウス胚におけるArsの発現を検出したところ、顕著な発現が見られ、マウス胚においてもArsがOtxに支配され、形態形成運動にかかわる可能性が示唆された。
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