研究概要 |
イモリなどの有尾両生類やRana属の無尾両生類は、間脳背側の神経核である手綱核 (Nucleus habenularis ; habenula)が左右非対称性を示す。アカハライモリ幼生においては、左の手綱核の方が大きく、前後軸方向により長く分布している。Zebrafishの間脳領域では、nodal, pitx2, lefty(antivin)の3つの遺伝子が左側のみに一過的に発現する。また、脊椎動物の左側板中胚葉においても、これら3つの遺伝子が左側のみに発現することが知られ、少なくとも側板ではnodalがleftyとpitx2を誘導するとされる。 これらの背景から、アカハライモリ胚を材料に、degenerate PCR法によりイモリnodal関連遺伝子をクローニングすることを行い、3'端側の262塩基の部分塩基配列を決定した。これをCynops pyrrhogaster nodal-related 1 (Cynr-1)と名付けることにした。推定アミノ酸配列をもとにしたBLAST検索(BLASTx)の結果、Cynr-1はZebrafish nodal related-2 (Znr-2;Squintと同一)や、ツメガエルの6つのnodal関連遺伝子のうちのXnr-1と最も相同性が高かった。Znr-2,Xnr-1ともに左側板特異的に発現し、しかもZnr-2は間脳の一部領域の左側のみに一過的に発現することが知られている。古くからの形態学的な知見と、以上の結果から、Cynr-1がイモリ胚間脳手綱核に左右非対称に発現する可能性が高いので、現在in situ hybridization法を用いてCynr-1 mRNAの発現パターンを調べている。今後は、同じdegenerate primer pairを用いて、Rana catesbeianaのnodalのクローニングと、RACE法によるCynr-1のORF全長の塩基配列の決定を行う予定である。
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