研究概要 |
間脳背側で第三脳室に面した領域に一対存在する神経核である手綱核(nucleus habenularis)は、動物種によっては左右非対称な形態を有し、その神経投射も左右非対称性を示す。両生類の場合にも、Rana属の無尾両生類や有尾両生類においては手綱核が左右非対称性を示す。本研究は手綱核の左右性非対称な形態形成に関与する分子機構を明らかにすることを目的としている。昨年度はアカハライモリ胚からnodal相同遺伝子であるCynr-1をクローニングした。無尾両生類のツメガエル胚では6つのnodal遺伝子が知られているので、イモリ胚においてnodal遺伝子が複数あると予想し、degenerate PCR法でこれをクローニングすることを試みた。その結果、Cynr-1遺伝子以外のnodal遺伝子は検出されなかったが、器官形成期には心臓特異的な発現を示すとされていたシグナル分子BMP-10の相同遺伝子が尾芽胚期のイモリ胚の頭部に発現していることが分かった。更に、メダカ胚においても、BMP-10が頭部領域に発現していることも分かった。次に、体節期イモリ胚に発現し、ツメガエル胚BMP-2ないしBMP-4に相同性の高いイモリ胚新規BMP(CyBMP)をクローニングした(GenBank ID; AB115561)。メダカ胚頭部からは、新規activinをクローニングした(AB116641)。イモリ胚のnodal遺伝子Cynr-1は、左右非対称な発現を示すツメガエル胚Xnr-1,ゼブラフィツシユ胚cyclopsなどのnodal遺伝子に相同性が高い。この発現は、Xnr-1同様、原腸胚期に発現した後、神経胚期半ばで発現が一時的に消失し、尾芽胚期に再び発現が回復することが分かった。現在、PCRで増幅したCynr-1遺伝子断片にT7,SP6 polymeraseによって認識されるアダプター配列を付加した後にこれを鋳型としてin vitro transcriptionを行いdigoxigenin標識RNAプローブを作成し、BMP-10などのwholemount in situ hybridizationを行うための予備実験を行っている。
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