研究概要 |
両生類アフリカツメガエル胚では、原腸形成以降に左右非対称に発現し左右軸形成に関与するとされる遺伝子として、現在までにnodal(Xnr-1),antivin, Pitx2の3つのみが同定されており、いずれも胚の左側の側板で発現する。これらの遺伝子は、硬骨魚類ゼブラフィッシュ幼生においては、間脳の左側に偏って一過的な発現をする。古くから、脳構造が間脳手綱核(habenula)において左右非対称な形態をとることが判明していた両生類であるが、脳神経系に左右非対称に発現する遺伝子は、未だにひとつも知られていない。アフリカツメガエルのアルビノ幼生は、極めて透明度が高く、脳の左右非対称性の研究に適した実験材料である。扁平な幼生の形態は、特に背側鉛直上方からの左右性の観察に適している。FITCで標識した蛍光dextranを後脳領域の脳室内に注入したところ、ツメガエルアルビノの脳室の形を非常にはっきりと可視化することが出来た。注入部位は中枢神経系の後方としたが、前脳の脳室にまで速やかに拡散し、翌日まで観察可能であった。蛍光dextranは脳室外に徐々に拡散したため、脳室壁も強く染色され、アルビノ胚を長時間生存させたまま、脳室内の液流が観察可能となった。今後、脳室内に各種成長因子や蛍光ビーズを蛍光dextranとともに注入していく。 メダカゲノムの塩基配列が公開されたため、昨年度我々がクローニングしたメダカ胚nodal相同遺伝子Onr-1,Onr-2について、ゲノム上の位置をmappingすることが出来、その全長ならびにexon, intron構造が明らかとなった。今後は、end-to-end PCR,5'-RACEなどの技法で、転写開始点の位置の塩基配列をより正確に決定し、その近傍の配列を標的としたアンチセンス核酸法でメダカnodalの脳左右性における役割を解明する。
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