上丘は層構造を特徴とする領域であるが、その層形成の分子メカニズムは余りわかっていない。リーリンタンパクを欠損するリーラーマウスやSRKラットの上丘への視覚性入力線維は上丘内で経路の異常を示すことが知られている。そこでリーリンが上丘に発現しているか否かをin situ hybridization法と免疫組織化学法により検討した。 用いた動物は胎生20日〜生後21日のリーラーマウス、SRKラット、対照動物である。これらの動物を灌流固定し、後固定後、上丘を含む領域をパラフィン包埋し、矢状断、前額断の完全連続切片を作成した。in situ hybridization用のRNAプローブは、マウスreelinの約5000bpのフラグメントをプラスミドベクターに組み込んだものをテンプレートとしてDIG RNAラベリングキットを用いてジゴキシゲニン標識したRNAプローブを作成し、in situ hybridizationを行った。一方、ラットリーリンのN端あるいはC端の合成リーリンタンパクを抗原としてウサギに免役し、リーリンポリクローナル抗体を作成し、免疫染色を行った。 胎生20日および生後0日令の正常マウス・ラットの上丘表層にリーリンmRNAを発現する細胞が分布した。一方、生後21日令の正常マウス・ラットの上丘にはリーリンmRNAのシグナルはなかった。同様に胎生20日および生後0日の正常マウス・ラットの上丘表層にリーリン抗体陽性細胞が存在したが、生後21日にはなかった。リーラーマウスやSRKラットではいかなる日令においてもリーリンシグナルを認めなかった。以上より、幼若時期の上丘の表層にはリーリンmRNAとタンパクが存在し、かつリーラーマウスやSRKラットで上丘に至る視覚性入力線維の走行異常があることより、リーリンタンパクはこれらの回路の軸索ガイダンスを行うと思われる。
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