ポストゲノム時代を迎え遺伝子情報を最大限に生かし任意の遺伝子の機能を明らかにするために、ショウジョウバエをモデル動物としてトランスジェニックRNAiを利用した遺伝子機能解析法の確立を試みた。GAL4/UASシステムを利用するために、UASプロモーター下流に目的の遺伝子の逆位リピート(IR)またはintron-spliced IRを組み込み、或いは二つのUASプロモーターの間に目的の遺伝子を挿入したもの作製し、トランスジェニック・フライを作製した。テストケースとしてhairy遺伝子に対する効果を指標にRNAiの効果を比較検討した。hairy遺伝子は胚発生の分節化と成体の神経発生を負に制御することが知られている。hairy-GAL4ラインと掛け合わせて、IRからヘアピンdsRNAを発現させた場合は、成体のhairyに対する効果は弱くライン間でのばらつきがみられたが、UASプロモーター間にhairy遺伝子の一部を組み込んだものを使った場合は、多くのラインでh^1にみられるような過剰の感覚毛が生じた。intron-spliced IRの場合は、hairy-GAL4ラインと掛け合わせるとその多くは蛹期に致死となったが、成虫になったものはscutellum以外は比較的弱い表現型を示した。発現が強く全体に発現するtubP-GAL4と掛け合わせると、100%蛹期または3齢期で致死となった。しかし、いずれの場合も胚発生の分節化の欠損は見られなかった。RNAi効果の強かったintron-spliced IRを用いて、神経難病原因遺伝子として注目されているtauについて調べた結果、強いGAL4ラインと掛け合わせによって蛹期致死となることが判った。現在、その原因について解析を続けている。
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