研究概要 |
ERは細胞内に網状にはりめぐらされた構造物であり、培養細胞においては細胞骨格系をレールとしてダイナミックに動いていることが近年示されている。神経細胞においても、神経軸索、樹状突起内に高度に発達したERのネットワークが存在している。神経軸索内では神経終末までの長い構造にわたって細胞機能を維持するために様々なレベルの軸策内輸送があることが知られているが、ERの構造はいかなる仕組みで維持されているかは不明であった.我々はER上にあるタンパク質に蛍光ラベルする事により、世界に先駆けて神経軸索内でのERのダイナミックな動きを可視化し、速い軸策輸送と遅い軸索輸送の中間の速度で両方向に連続的に動いていることを明らかにした.ERは細胞内カルシウム貯蔵部位であるから、神経軸索内をカルシウム貯蔵部位がダイナミックに移動していることを意味し、神経軸索の機能を考える上で重要な知見であるといえる。神経細胞の樹状突起もまた非常に極性のある細胞構造であり、神経細胞に投射するシナプス情報を集約し、制御している。樹状突起(シナプス後部)でのERからのカルシウム放出はシナプス可塑性といった高度な神経機能を制御する要素である.我々は,初代培養マウス海馬由来神経細胞の樹状突起において,小胞体の一部はvesicle状で微小管依存的に高速で輸送されていることを見い出し、その動態を詳細に解析した。また、vesicle状のERもやはりIP3によるカルシウム放出能があることを示し、さらにこの輸送にはキネシンモータータンパク質が関わっていることを証明した。以上の成果を論文にまとめて現在投稿中である。
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