研究概要 |
rasH2マウスがDMH誘発大腸癌に高感受性である理由については不明であった。そこで、rasH2マウスが何故DMH誘発大腸癌に高感受性であるかを検討するために、発生した腫瘍について発癌関連の遺伝子変異、遺伝子発現量を調べ、rasH2マウスと対照マウスのnon-Tgマウスで発生した腫瘍での遺伝子発現量を比較した。癌関連遺伝子の発現についてGene Navigator^<TM> cDNA Array System(TOYOBO)を用いて検索したところ、rasH2マウス、non-Tgマウスにおいて腫瘍部と非腫瘍部で差のみられた遺伝子、MMP7,Clusterin, nm23,c-jun, SLC, Bad, Bax, Gelsolin, Ran, SkpI p19について発現量をRT-PCRで確認したところ、MMP7,Clusterin遺伝子においてrasH2マウス、non-Tgマウスともに腫瘍部での遺伝子発現が非腫瘍部と比較して高かった。MMP7(マトリライシン)は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカンといった巨大分子からなる細胞外マトリックスを分解する酵素であり、直結腸癌の肝転移に関連している。そして、β-catenin/TCF複合体によって異常に発現したときに癌を進行させる役割を持つという報告もある。また、Clusterin遺伝子は癌抑制遺伝子の一つであり、細胞死の活性化、免疫調節、細胞接着、形態学的変化に関係している。ヒトの乳癌で発現量が上昇し、腫瘍形成、進行に関与しているという報告がある。これらの遺伝子を含めて腫瘍部で発現が亢進している遺伝子や抑制されている遺伝子群に関して、rasH2マウスとnon-Tgマウスで類似した結果が得られた。
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