研究概要 |
1.目的 精細管内へ直接DNAを注入することにより、精原細胞への遺伝子導入を試み、効率的なトランスジェニック動物作製法を開発する。 2.方法および結果 (1)精細管内注入を行うためのマイクロピペットの作製および注入量の確認 受精卵マイクロインジェクション用ピペットを用いて生後2週齢の幼若マウスの精細管および精巣内間質にトリパンブルー(TB)を注入し、注入量およびTBの精巣内での局在性を確認した。精細管内注入では、輸精管-精巣網を介して精細管内にTBを注入することが可能であり、その注入量は約6μl/精巣であった。一方、精巣間質注入では、約10μl/精巣の注入が可能であり、TBが注入数分後に輸精管を介して精巣上体頭部にまで達することがわかった。 (2)DNA-liposome complexの幼若マウス精細管内への注入 3種のliposome(DMRIE-C, SuperFect, Lipofectin)を各々DNA(CAG-EGFP)とのcomplexを作成し、生後2週齢マウスの精細管および精巣間質内に注入した。注入後、7日目および21日目に各々精巣より精細管を採取し、蛍光顕微鏡にてGFPの発現を確認した。その結果、DMRIE、SuperFectを用いた精細管注入群で注入7日目、21日目のいずれにおいても5例中3例に精原細胞やセルトリ細胞でのGFP発現が確認された。一方、精巣間質内注入群では、DMRIEを用いた場合にのみ、5例中2例に精巣間質のみならず、精原細胞やセルトリ細胞でのGFP発現が認められた。このことから、DNA-liposome complexの精細管および精巣間質内注入のいずれの場合においても精原細胞へ遺伝子導入できる可能性のあることが示された。今後、導入遺伝子の初期胚および産仔への伝達性を確認する。
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