研究概要 |
本研究の目的は、ヒト細胞、臓器を免疫不全マウス(NOD-SCID)マウスに移植し、難病の発症機構の解明と新しい治療戦略の開発を目指したヒト病態モデルマウスを確立することにある。本年度はヒト肝細胞をNOD-SCIDマウスの腎被膜下に移植し、HCV感染モデルの開発を試みた。手術時に得られたヒト肝細胞を2-3mmに刻みマウス腎被膜下に移植した(慶応大学病院倫理委員会承認済み、ドナーのインフォームドコンセント取得済み)。マウス皮下にも移植を試みたが定着せず、腎被膜下移植を行った。多分、マウス皮下への肝細胞の定着には血流の供給が十分ではないものと思われる。肝組織は移植後、50%のマウスで4周間は定着したが、その後は肝組織は胆管により置き換わった。ヒトアルブミンやα-1-antitrypsinがマウス血清中に検出された。またHCV感染肝組織の60%以上が定着した。肝細胞の組織学的検索ではサイトケラチン8,19、さらにCD34,L26が陽性であった。これらの結果からヒト正常、HCV感染肝細胞をGrowth Factorの供給なしにマウスに移植することが可能であり、HCV感染実験は移植後4周間以内に終了する必要があることが分かった。さらにHCV感染肝移植マウスの血清中にRT-PCR法によりHCV RNAの検索を行った。HCV RNAは移植後1周目から検出され4周目まで陽性であったが、5周以降は検出されなかった。現在、正常肝細胞移植マウスへのHCV感染を試みている。これらの研究成果はヒト肝細胞をNOD-SCIDマウスに移植しHCV感染モデルマウスの確立の可能性を示唆している(論文投稿中)。
|