研究概要 |
中空ファイバは,当初,波長が2μm以上の赤外光を伝送する目的で考案された.内部が中空であるため,手術中の煙の吸引・排出が可能なこと,波長が10倍以上もことなるパイロット光も伝送可能なことが分かり,一部実現してきた.中空ファイバを改良することにより,医療用途において有用な超音波およびマイクロ波をも伝送可能な超多機能性中空ファイバを実現することを目的とする. その方法として,保護層付き石英キャピラリーチュープの外部に金属層を設け,内面に銀層と有機樹脂が内装することにより,赤外光,超音波、およびマイクロ波のすべてを同時伝送可能なシステム構築をめざし,その可能性について検討した. 本研究では本年度において,以下の研究を行なった. 1.パイロット光伝送可能な超細径有機樹脂内装中空ファイバの製作と評価 石英キャピラリーチューブ(内径0.25mmで長さ2m,内径0.1mmで長さ50cm程度)内部に,全液相法を用い銀膜と環状オレフィンポリマー,略称COP)を1μm以下の所望の厚さにコートした.COP膜の厚さを精密に制御することによって,伝送赤外光とパイロット光(赤あるいは緑)を効率的に伝送する中空ファイバの製作を行なった. 2.超細径中空ファイバによる超音波伝送 中空ファイバは弾性波を伝送できる構造になっている.即ち,治療のための超音波をも患部に導くことが出来ることを意味する.超音波伝送の可能性について理論的検討を行った. 3.高効率入射結合系の構築と超細径中空ファイバの評価 超細径中空ファイバに,Er : YAGレーザあるいはCO2レーザ光などのように,比較的大きなスポットサイズを有する光を効率的に入射させるために,テーパー形状の入射結合器を製作した.入射結合損失を減らす構造設計ならびに,この入射結合器を用い,超細径中空ファイバの各種伝送特性を評価した.
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