研究概要 |
本研究は,柔軟な構造によって神経への侵襲や「ずれ」を防止する微小多点神経電極の開発を目的としたものである.具体的には下記の課題の解決を図った.個々の課題は動物の神経を対象とした評価実験を行なった上で,さらに統合して,一体化を目指すこととした.以下,課題毎に研究目標と本年度の実績について説明する. 1 柔軟な基板を有する神経電極の開発(これによって網膜,神経束,脳といった様々な対象に対して,電極全体の形状的な適合性が高度に向上することが期待される.) 実績:ポリイミドを基板とした,シリコンを針電極とする剣山型電極の試作に成功した.針電極の強度や針電極の長さなどに改善すべき点が残されており,次年度の課題とする. 2 柔軟な電極構造を有する神経電極の開発(これによって,神経束内での個々の神経線維に対する機械的侵襲度が低減し,生体適合性が向上するだけでなく,上記の「ずれ」の問題の解決も期待される.) 実績:ポリイミドやパリレンを基板とし,針電極部も基板を折り曲げて構成する形の新しい剣山型の電極を開発した.A)に比べ高度な柔軟性を獲得している.ラット脳皮質を対象とした計測にも成功している.さらなる多チャンネル化,侵襲度の低下などの課題が残されており,次年度の課題とする. 3 柔軟な電極の刺入・装着方法の開発(柔軟な電極は,そのままでは網膜,神経束,脳の中に刺入することが困難であるため,刺入・装着方法を開発する.) 実績:上記2の電極の針電極部について,ポリエチレングリコール(PEG)をコーティングすることにより,刺入に必要な固さを獲得し,刺入後にはPEGが神経組織内で溶解することによって,柔軟化させることに成功した.PEGコーティングの再現性などに課題が残されており,次年度の課題とする.
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