研究課題
本研究は、細胞内動態を制御可能な新規高分子型光増感剤を分子設計し、機能解析を行うとともに、その高分子ミセル化による固形ガンを標的としたデリバリーシステムを構築することによって有効なPDTを実現することを目的とする。本年度は、新規高分子型光増感剤として表面に異なる官能基を導入することにより、荷電の異なるデンドリマー型光増感剤を合成した。導入した官能基としては、アニオン性であるカルボキシル基と、カチオン性である1級アミノ基の導入に成功した。得られた表面荷電の異なるデンドリマー型光増感剤について、培養ガン細胞(LLC cell)に対する抗腫瘍効果(PDT効果)を評価した結果、アニオン性のものとカチオン性のもので顕著なPDT効果の差があることが確認された。細胞内取り込み量へのデンドリマー型光増感剤の荷電の影響を蛍光分光光度計により評価した結果、カチオン性光増感剤の方が、細胞への取り込み量が多いために、高いPDT効果を示したことが確認された。さらに、高いPDT効果を示したカチオン性デンドリマー型光増感剤の細胞内局在を、細胞内小器官を蛍光色素で特異的に染色した後、レーザー共焦点顕微鏡で観察することにより評価した。さらに、デンドリマー型光増感剤の表面荷電を利用して高分子ミセルへの内包を検討した。アニオン性デンドリマー型光増感剤と反対荷電を有するブロック共重合体(ポリエチレングリコール-ポリ(L-リシン)ブロック共重合体)を混合することにより高分子ミセル(ポリイオンコンプレックスミセル)への内包を行い、動的光散乱測定により平均粒径50nm程度の単分散なミセルが形成されていることが確認された。このポリイオンコンプレックスミセルの安定性へのpHの影響を静的光散乱測定により評価した結果、中性pHから細胞内エンドソームに相当するpHへ変化することによりミセルの会合状態の変化が生じることが確認された。これは、次年度評価予定のミセルへの内包による細胞への取り込み及び細胞内動態に変化をもたらすことを期待させるものである。
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