研究概要 |
手術用材料として市販されている吸収性ポリグリコール酸フェルト(グンゼ社製ネオベール)を用いて、弁葉作製のための足場となる骨格を作製した。この弁葉をポリウレタンで作ったスポーク状の弁座に、ポリプロピレン製のねじで固定し、弁葉がポリグリコール酸、弁座がポリウレタンからなるJellyfish弁を作製した。しかしながら培養中にねじの固定部がはずれてしまうことが分かり、弁葉中心部をポリウレタンにて弁座に接着する方式へ改良した。 ヤギの頸静脈を取り出し、1mm〜2mm程度の大きさに細切し、dish上に播種した。α-MEM培地500mlに、ペニシリン20万単位・ストレプトマイシン200mg、10%FBS(ウシ胎児血清)を加えた培地で培養した。1週間ほどで血管構成細胞である内皮細胞・線維芽細胞などからなる混合細胞コロニーが得られた。これをトリプシン処理してフラスコに移し、播種できる細胞数(5×10^6)まで培養を続けた。遠心後2×10^6cells/mLの濃度でフェルト上に播種し、同じ培地で2週間培養した。フェルト繊維に細胞は固着し、フェルト上で細胞分裂が見られた。2週間後弁葉の構成成分はポリグリコール酸37%・細胞73%(顕微鏡下での面積比)であった。 アクリルで作製した弁試験装置に無菌的にこの弁を取り付け、培養液中で圧較差・逆流耐圧・順方向流量・逆流量などの弁機能を計測した。その結果、流量4L/min,逆流耐圧50mmHgまでは圧較差、逆流ともほとんどなく心臓弁としての機能があることが分かった。しかしながら80mmHgの圧力下で30分計測を行ったところ、弁葉が破損し逆流が見られた。破損部はスポークの接触部分に見られた。また破損した弁葉および細胞片が培養液中に流出した。このため肺動脈弁としては使用可能であるが耐久性に問題があることが判明した。またこのままでは大動脈弁としては使用できないことも分かった。 弁座についてもウサギ耳介軟骨より作製を試みた。その結果直径が20mm程度ならば作成可能であるが、小口径(10mm)にするとスポーク間に細胞が増殖し開口部を閉鎖してしまうことが分かった。
|