<臍帯血からの造血幹細胞の維持・増殖>ヒト間葉系幹細胞へhTERTとBMI1またはHPVのE6/E7の遺伝子導入により戸口田らにより株化された細胞をフィーダ細胞として用い、ヒト臍帯血からの造血前駆細胞(CD34^+CD38^-)の維持・増殖の検討を行った。7日間の培養でCD34^+CD38^-細胞を150倍以上に増加させることができる株化されたヒト細胞を見いだした。CD34^+CD38^-造血前駆細胞を効率よく増殖させえる初めてのヒト由来細胞株である。また、戸口田らの細胞は間葉系幹細胞としての特性(遺伝子発現)よく解析され、また、骨細胞、軟骨細胞、また脂肪細胞への分化方法が確立されており、われわれの造血前駆細胞(CD34^+CD38^-)の維持・増殖の研究と統合することで、骨髄中での造血幹細胞nicheについても有益な知見がえられると考える。 <3次元的ニッチの作製>多孔質ハイドロキシアパタイト、多孔質セルロース、多孔質ポリウレタンの試作と造血前駆細胞(CD34^+CD38^-)の維持・増殖の検討を行っているが、培養後の多孔質体からの細胞の回収に難渋し、未だ定量的な評価が行えていない。より単純な多孔質体として、薄膜に垂直な孔が多数開いたヌクレポア膜を用いて検討している。各種孔径の異なるヌクレポア膜を用いて造血前駆細胞(CD34^+CD38^-)と上記ヒト由来細胞株の共培養を行ったところ、孔径が0.45μmの膜では膜を用いない共培養系とほぼ同じ程度に造血前駆細胞(CD34^+CD38^-)の維持・増殖を行うことができた。現在までの研究結果を統合することで、限られた空間に造血前駆細胞とヒト間葉系幹細胞が共存するin vitroで造血幹細胞nicheの作製する目途はたったと考える。
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