研究概要 |
心臓疾患に関連するRhoキナーゼの基質タンパクのアミノ酸配列データベースからの情報を元に,Rhoキナーゼの基質ペプチド配列を設計する事に成功した。また,Rhoキナーゼの触媒ドメインをコードする遺伝子を発現ベクターに組み込み,大腸菌から発現させる事に成功した。 また,キナーゼ応答型遺伝子送達材料の設計と評価のため,Aキナーゼに選択的な基質配列を側鎖に多数組み込んだ,ポリアクリルアミドとポリイソプロピルアクリルアミドを設計,合成した。後者は,遺伝子発現は抑制したが,Aキナーゼシグナルによる遺伝子発現の活性化は起こらなかった。一方,ポリアクリルアミドを基本としたコンジュゲートは,遺伝子と複合体を形成して発現を完全に抑制し,しかも,Aキナーゼシグナルにより発現を完全に回復し,遺伝子スイッチの基礎を確立する事ができた。コンジュゲートと遺伝子の複合体形成比を検討したところ,この発現制御は,荷電比が1以上で起こる事が分かった。さらに,細胞への導入を考え,細胞膜透過型ペプチドであるHIV Tatタンパク由来のアミノ酸配列を有するペプチドを評価した。まず,カスパーゼ-3に応答する基質配列を用い,これにTatペプチドを組み込んだペプチドをポリアクリルアミドに組み込んだところ,遺伝子との複合体を細胞内に導入できる事を見出した。また,遺伝子は,標的とするカスパーゼ-3存在下でのみ発現した。そこで,このtatペプチドをキナーゼ応答型コンジュゲートにも組み込んだが,この場合,組み込めるTatペプチドの量が,荷電比の関係で制限されるため,良好な細胞への導入は観察されなかった。現在,新たなTatペプチドの導入法を検討している。
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