ミオシンホスファターゼのRhoキナーゼによるリン酸化部位のアミノ酸配列を元にRhoキナーゼに対する基質ペプチドを設計、合成した。また、CaMKIIに対する基質ペプチドも同様に設計合成した。また、これらに応答する遺伝子キャリヤーの開発のため、Tatやオリゴアルギニンなどを利用して細胞透過型を有すると期待できる種々のペプチドグラフト高分子型キャリヤーを合成して、その細胞透過能を評価した。しかしながら、何れも期待したほどの高効率な細胞透過能は示さなかった。そこで、カプシド法の適用を検討した。すなわち、センダイウイルス由来のカプシドを用い、この中にキャリヤーと遺伝子の複合体を封入して評価したところ、これが良い細胞用可能を有していることが分かった。また、細胞内に導入されたキャリヤーが、標的キナーゼシグナルによる遺伝子調節能を有していることを見出した。ただし、開発したキャリヤーと遺伝子の複合体は、静電相互作用によってのみナノ粒子を形成しているため、サイズの制御が困難であり、また、サイズ分布の時間依存性が見られた。そこで、PEGユニットを導入し、ナノ粒子のサイズ制御が可能なタイプのキャリヤーを設計、合成した。今後、この複合体のカプシドへの封入効率を検討する必要がある。さらに、循環器系疾患における遺伝子投与部位を的確に検出するため、新しい造影剤を開発した。これを単離血管および生きたラットに適用したところ、内皮が傷害を受けた箇所のみを選択的に検出することが可能であった。
|