本研究では、血管組織再生における構造形成および機能発現に対するマトリックスによる制御と力学的負荷による制御の違いを明らかにする。そのために、血管組織におけるレイヤー構造を忠実に再現し、かつ細胞間コミューケーションが保証された培養システムを確立しなければならない。これを可能にするのが、ハニカムフィルムを用いた血管組織培養システムである。ハニカムフィルムとは、高湿度条件下で両親媒性高分子溶液の揮発に伴って溶液表面に生じる微小水滴の二次元規則配列を鋳型とすることにより自己組織的に形成される多孔性高分子薄膜である。 本年度は、(1)細胞培養マトリックスとしての自己支持性ハニカムフィルムの作製、(2)自己支持性ハニカムフィルム上での血管内皮細胞、血管平滑筋細胞の培養、(3)流れ負荷のかけられる培養チャンバーの製作、について研究を行った。その結果、(1)生分解性高分子であるポリε-カプロラクトン、ポリ乳酸より作製したハニカムフィルムを延伸することで、細孔の配列に異方性持たせることができるようになった。(2)この延伸ハニカムフィルム上で管内皮細胞、血管平滑筋細胞を培養したところ、いずれの細胞も細孔の配列パターンに沿って配向することが明らかとなった。(3)流れ負荷のかけられる培養チャンバーを設計し、作製した。現在、ガラス基板上で培養した細胞を用い、流れ負荷環境が実現しているかを確認している段階である。
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