生命倫理学における正義論についての研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14701001
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 宮坂 道夫 新潟大学, 医学部, 助教授 (30282619)
• キーワード: 生命倫理 / 正義論 / 生殖医療 / 医療資源 / 遺伝子医療 / 終末期医療

研究概要

本研究は、医療の公共政策という文脈の中で正義論を再検討し、生命倫理学における正義論を批判的に再構築するために、臨床事例を詳細に検討しながら実証的に理論構築を行ってゆくことを目的とした。平成14年度は、その準備段階として、正義論と生命倫理学に関連した文献を収集し、生命倫理学の中でこれまでに論じられてきた正義論の位置づけを整理した。具体的な領域としては、特にA.生殖医療(不妊治療、クローン化技術等)、B.医療資源としての身体利用(臓器移植等)、C.遺伝子医療(遺伝子治療、遺伝子の特許化等)、D.終末期医療(安楽死等)の四領域に着目した。その結果をいくつかの学術論文として発表したが、本研究のイントロダクションともいえる以下の二編について概略を述べる。
1)宮坂道夫:生殖補助医療政策に関する「物語的正義」についての試論,医学哲学倫理,20号,66-78頁,2002年
2)宮坂道夫:資源化の正義と物語的正義-生命倫理学における正義論についての試論-,生命倫理,13号,168-174頁,2002年
1)においては、英語圏の生命倫理学における正義論を批判しながら、この問題を「資源化の正義」というカテゴリーで扱う可能性について論じるとともに、ロールズの正義論を批判的に再検討し、先端医療の資源化を扱うための方法論としての「物語的正義」について、生殖的クローニングを題材に論じた。2)では、わが国においていかにして生殖補助医療についての政策決定を行ってゆくべきかについて、正義論の観点から検討した。主に代理出産の是非に焦点を絞り、最初にアメリカ生命倫理学の形成してきた論理的枠組みの問題点を概観した。次に正義論の拡大によってこの問題を扱いうる可能性を論じ、最後に政策論の基礎づけについて、共同体主義、討議倫理と「物語的正義」論とを比較考察し、今後の政策決定の方法論に必要な論点について考察した。

研究成果

• [文献書誌] 宮坂道夫: "生殖補助医療政策に関する「物語的正義」についての試論"医学哲学倫理. 20号. 66-78 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "資源化の正義と物語的正義-生命倫理学における正義論についての試論-"生命倫理. 13号. 168-174 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "医療倫理学とは何か-「オープンネス」をキーワードとして-"日本放射線技師会雑誌. 49(4). 322-327 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "NBM(Narrative Based Medicine)"歯界展望. 100(3). 610-611 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-医療倫理学とは何か?"看護学生. 50(1). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-医療倫理学の「思考の道具」(その1)"看護学生. 50(2). 60-61 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-医療倫理学の「思考の道具」(その2)"看護学生. 50(3). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-医療倫理学の「思考の道具」(その3)"看護学生. 50(4). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-性,生殖,育児についての問題(その1)"看護学生. 50(5). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-性,生殖,育児についての問題(その2)"看護学生. 50(6). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-性,生殖,育児についての問題(その3)"看護学生. 50(7). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-性,生殖,育児についての問題(その4)"看護学生. 50(8). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-性,生殖,育児についての問題(その5)"看護学生. 50(9). 64-65 (2002)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-死についての問題(その1)"看護学生. 50(10). 64-65 (2003)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-死についての問題(その2)"看護学生. 50(11). 64-65 (2003)
• [文献書誌] 宮坂道夫: "看護倫理への招待-死についての問題(その3)"看護学生. 50(12). 60-61 (2003)