本年度は(1)定量的なデータセットの再分析、(2)定性的な聞き取り調査を日伊両国について進めた。定量的データについては、昨年度に一定程度整備を進めたイタリアの人口統計データ及び保育政策を中心とする家族政策にかんするデータセットについて、州別および県庁所在地別のデータを用いた定量的類型化の分析を進めた結果、「北部型」「南部型」「中間型」の3つの類型を析出した。それに対応する日本側のデータについては、様々な方法を検討しながら分析したが、イタリアのような明確な地域的類型は得られなかった。 定性的データについては、上記の分析のなかで、イタリアについてほぼは北部、南部、中央部それぞれに対応する地域類型が見されたため、代表的なケースとして、ボローニャ(北部型)、ローマ(中間型)、ナポリ(南部型)の地域について、それぞれの州政府および県庁所在地コムーネにおける保育担当部局にて、(1)各地域における少子化の人口動向にかんする認識、(2)各地域における家族政策の動向、についてヒアリング調査及び統計資料の収集を行った。ヒアリング調査の結果、第二子以降への出産給付という形で中央政府の少子化対策がとられていることへの認識はどの自治体でも共通しているものの、家族政策については地域により異なる認識がなされていることが示された。すなわち、ボローニャにおいては州政府のイニシアチブで保育をめぐる家族政策の先進的な組織化が進められており、それは明白に少子化と関連付けられているが、ナポリにおいては保育政策の充実は優先順位の相対的に低い政策課題として認識されており、ローマについてはその中間的性格を有することが明らかになった。 日本については、上記定量的データセットの分析と平行して、イタリアに類似した形式でのヒアリングの計画を検討している。
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