本研究では、まず鹿児島県大隅半島における古墳の調査を開始した。古墳の調査を通したこの地域の実体解明は、古墳築造の本質的な意義、日本列島における国家形成過程あるいは各地域性の発現など、さまざまな歴史動態とその背景を考察する鍵を握る。 1.平成14年度はまず大隅半島において古墳の踏査から開始した。その結果、肝属郡串良町岡崎古墳群に保存状況の良好でかつこの地域の古墳時代研究に重要な位置づけをもつ可能性のある古墳を確認した。また唐仁100号墳では従来墳丘の外側であるとみられていた場所で葺石を確認し、現状よりもさらに大型の前方後円墳であることなどを確認した。 2.踏査の成果を受け、岡崎古墳群中の一古墳を18号墳とし、平成14年8月28日〜9月18日と平成15年2月4日〜2月25日の2次にわたり学術発掘調査を実施した。その結果、古墳は20m級の円墳で本古墳群中では盟主的な存在であること、さらに墳丘裾部分での土器を用いた祭祀空間を検出した。祭祀は古墳時代中期のきわめて稀少な初期須恵器を用いたものであり、今後土器の流通・製作技術、祭祀実態等の分析は古墳時代研究の重要な課題となる。 3.岡崎18号墳の北に存在する古墳の草木伐開作業を行った結果、この古墳が前方後円墳である可能性が極めて高いことが判明した。新たにこれを岡崎20号墳とした。古墳南限地域での前方後円墳の新たな発見はこの地域の古墳時代社会の分析において重要な資料となる。 4.県内に収蔵されている古墳時代資料の調査を進めるとともに、東京国立博物館に収蔵される重要な鹿児島の古墳時代資料などの資料調査を行い、データ化を進行している。また日本列島等の比較の上で重要な韓国の古墳時代資料との比較検討など進めている。
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